【紹介+感想】(映画)『花束みたいな恋をした』

予告から泣くとわかっていたから、一人で観に行った。案の定リアルなエモが詰まった作品で、マスクが水没しそうになった。帰り道はちょうど雨が降ったから、劇中の2人をなぞってトイレットペーパーを買い、濡れながら家まで歩いた。

ではストーリー紹介を。終電を逃したことから偶然出会った2人の大学生、山根麦(演・菅田将暉さん)と八谷絹(演・有村架純さん)は、話していくうちに驚くほどお互いの趣味が合うことに気づく。一緒に過ごす時間が楽しくてしょうがない2人はデートを重ね、交際を始める。

大学4年生の夏。麦はイラストレーターを目指して、絵を描く毎日。絹は就活をしたが厳しい面接に心を消耗し、麦に「そんな理不尽な就活なんてしなければいい。一緒に暮らそう」と提案される。かくして2人の同棲生活が始まった。

猫を拾って飼い始めた。お気に入りの焼きそばパン屋さん。駅から30分かかる帰り道を歩きながら飲むコーヒー。一緒に鑑賞して泣いた作品。はたから見ればささやかかもしれないが、2人にとって宝物のような日々が過ぎていく。麦は少ないながらもイラストの仕事をもらい、絹はアイスクリーム屋でバイトを始めた。このまま変わらない生活が続くと思われたが…。

麦の父が家を訪れた際、地元に帰ってこないならば仕送りを止めると言われてしまう。さらに麦のイラストの報酬が不当に少なく、異議を申し立てると依頼を取り下げられてしまった。そこで彼はある決心をする。「絹ちゃんとの生活を現状維持していくために、俺就職するよ」

麦は営業職につき、多忙な毎日を送り始めた。絹もこじんまりとした事務職についた。経済的には安定したが、麦は仕事に一生懸命で、かつて絹と楽しんでいた漫画などに興味を示さなくなっていく。絹は空いた時間を1人で変わらず趣味に費やし、寂しい気持ちを持て余す。2人はすれ違い始めるのだった…。

何が辛いって、2人とも2人で過ごす未来を望んでいたことだ。でも麦は大人として仕事に励み、お金がある「普通の幸せ」な生活を、絹は大学生のときと変わらない、貧乏だが2人長い時間をともにする生活を見据えていて、そこでズレが生じていった。

我々視聴者にとっても2人にとっても、咲き誇る花のような日々は麦が仕事を始める前の青春時代を指すだろう。ただ、先に抜け出した麦が悪者というわけではないのだ。

なぜなら、麦は仕事をしていくうちに変わってしまったが、採用時聞いていた通り本当に定時に帰れる仕事だったら、イラストを細々と続けたり、絹との時間も変わらずあったに違いないのだ。また絹はずっと変わらないとはいえ、片や売れないイラストレーター、片やバイトでは生活するのがやっとで、彼女が望むものは結局削られてしまうことも、薄々分かっていたに違いない。2人がずっと一緒にいるには「あと一歩」が足りなかったのだ。

終盤2人が別れることを決めると、引っ越しの日までかつてのように笑い合う日々を取り戻す。それはエピローグのようであった。私は2人がどうにかまた結ばれればいいのに、と最後まで思っていたが、もう結び目は解けてしまって、お互いにはお互いの幸せを祈る気持ちしか残っていなかったのだと思う。うう。

枯れてしまうまでの5年間すべてを、「花束のような恋」として大切に抱えて、2人は生きていくのだろう。生花もいいが、ドライフラワーも綺麗だ。きっと。

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