髙宮利行『西洋書物学事始め』

髙宮利行『西洋書物学事始め』青土社、1993年

単行本¥873より(2021/04/19現在)

現在慶應義塾大学名誉教授で中世英文学・書誌学を専門とする髙宮先生が手がけられた、1991年ごろのエッセイ集。(髙宮先生は2021/02には公式ホームページを開設され、また2021/04/01現在、Youtubeで「書物史講座」なども閲覧可能。こちらも是非拝見したいところ!)

16のうち2篇をピックアップして紹介していこうと思う。

1 ペンと剣は両立する?−写字生のイコノグラフィー

中世の写本は人が写している。その役割を担う「写字生」が写本の挿絵としてどのように描かれているのかみていく。顧客向けのアピールに貧乏な様相を醸し出したり、象徴的な仕事道具とともにしばしば描かれたり。道具への工夫という観点で言えば、我々が古い書き道具として思い浮かべがちな鷲ペンは、実際に使うときには羽を取って長さも短くしてしまうことが多かったという。びっくり。

今だって本を作るときには心が込められているだろうけれど、作業の過程がずいぶん短略化したのは確かと思う。「獣皮を鞣して羊皮紙を作り丁単位で準備する人、ブドウの若木を燃やした煤や虫こぶからとった物質を、ワインやゴムと調合してインクを製造する人」「鷲ペンや転写の見本となる写本を供給したりする人」「転写し終わった本文を原文と照合する人、本文に朱を入れる人、装飾を施す人、そして製本する人」(17頁)…多くの職人が携わり、手作業で本が作られていた。機械化され、オンラインのやりとりが可能となった今では考えられないほど時間が費やされていた。当時の本の価値は芸術品としても高かったのである。

7 これがないと古書の価値も半分に−ハーフ・タイトルの歴史的考察

まず恥ずかしながら「ハーフ・タイトル」を知らなかった。読んだことがある英米の本はペーパーバックばかりで、あまり見覚えがなかったのだ。今もほとんどの英米書で印刷されるというこの「ハーフ・タイトル」は、十九世紀までの製本事情の名残りだという。

客が頼んでから初めて本格的な製本が行われていた当時では、印刷物がそのまま小積みで店に置かれていることも多かった。ただ、タイトルが書かれた紙が1番上になっていると頼りないので、商品を守るためにさらに上に置いた「遊び紙」に簡略化したタイトルを書いたのが始まりだという。

この有る無しがコレクター価格を決めたり、海賊版と正規品を見分けるポイントにもなるというのが実に興味深かった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA