【まとめ】大橋崇行『ライトノベルから見た少女/少年小説史 現代日本の物語文化を見直すために』はじめに〜第1章

大橋崇行『ライトノベルから見た少女/少年小説史 現代日本の物語文化を見直すために』笹間書院、2014年


Kindle¥1881、単行本¥1980(2021/04/19現在)

筆者の大橋さんは、作家・国文学研究者。明治時代から執筆当時の平成時代まで、広く考察して「ラノベ」をとらえようとする一冊。今回は、そのはじめに〜第1章をまとめてみる。

幾つかのポップカルチャー研究文献に記されているように、そして本書の「はじめに」にもある通り、ポップカルチャーで論文を書きたいという学生の数に比べると、それを導いてくれる議論は少ない。本書は、横国大・目白大で行われるライトノベル研究会に参加する筆者が入門書等の執筆を経て取りかかったものであり、ライトノベルが「まんが・アニメ」文化から編成されたという通説を疑問視する。

読者層とラノベについて。読者の年齢層が上がるとライトノベルの人気テーマもそれに応じて大人向けになったりする(SF)。また、読者が就職し経済的に安定すると、自分の青春時代に読んでいたものと近い作品を手に取ったりもする(RPG)。作り手による工夫としては、地の文を読者層と同じ年齢感で書くそうだ。

ちなみに、近頃キャライラストを用いるライトノベルの手法が一般文芸に進出しているのも、中高生向けで最盛期ほどの勢いがなくなったライトノベルが、かつての読者層に向け一般文芸で活路を見出しているととれる。

 

ところで!ライトノベルの定義とはなんだろうか。東浩紀さんの『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』を参照しても、実は「データベース理論」は文芸批評の「コード論」とほぼ同義で、目新しさはない(丸屋的にはそれをライトノベルに持ち込み、よりその文化に馴染みのある言い回しになっているだけで意義があるような気はするけど)。

では現実をうつしとる「リアリズム」な文学に対して、非現実をうつしとるのが「キャラクター小説」か?とはいえリアリズムを基とする自然主義文学や私小説は、実はいわゆる「内輪モノ」である。その時代の代表のようによく取り上げられるが実際は同時代の数%にすぎない。教科書的な文学史をもとにするのは危険ということだ。

そもそも、私小説だって作者の現実をまるまる写しとったものとはいえない。読者は小説の「私」=作者と捉えるかもしれないが、果たして太宰治さんが本当にあんな日々を送っていたわけではない。「リアリズム」は結局フィクションであり、私小説だってキャラクター小説なのだ。

(もっと元をたどれば、どんなものだろうと、発する側があることをありのまま表現すること、そして受ける側がそれを全て受け取ることは不可能なのだ。極論だけれども。)

それと、ラノベはジャンルなのか問題。チャールズ・ベイザーマンさんによると、「ジャンル」はコミュニケーションのための社会的な場を構築し、人々の価値観や行動を編成する媒体の集合体。ラノベの読者にも、ラノベというジャンルに関する共通のデータベースがあるので、ラノベは立派なジャンルと言えよう。

というわけで、筆者は次のようにラノベを定義した。

「主として中学生から大学生にかけての学生を想定読者とし、まんがやアニメーションを想起させるイラストを添えて出版される小説群のこと。また、物語の作中人物も、まんがやアニメーションに登場する「キャラクター」として描かれる、キャラクター小説である。」(41頁)

本書の問題提起は以下の通り。

①日本語文化圏において脈々と受け継がれてきたキャラクターというものがいったいどのように形作られるのか、その問題について、ライトノベルを手がかりに考える。

②①の問題について考えるために、日本のまんが・アニメーション文化について、これまでの言説が行ってきたような戦後まんが史から出発するのではなく、その前史も含めて、日本において作られてきたエンタテイメントとしての<物語文化>がいったいどのようなものだったのかという視点から再検討する。

よって第二章は、少女小説・少年小説がまんが・アニメ文化の基礎となったことを示していく。第三章は、今までと異なる視点から物語文化における<キャラクター>について再考する。

 

「ライトノベル」という用語の初出に関しては2004年に『読売新聞』の記事で書かれており、1990年代初めにユーザー同士がオンラインでやりとりできるサービス「会議室」で管理人をしていた方が、少年少女向け小説を総括する名前としてつくったのだという。

が、この情報元がインターネット上の定説なのであまり信頼度が高くない。その上、1990年代に生まれたその言葉が今も意味を変えず続くというのはおかしいし、2004年以降になるまで普及もしなかった。少女向けレーベルと少年向けレーベルをひとくくりにして言うことも問題だ。

少女小説、少年小説に関しての細かい論説は第2章へ続く。

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