内田百閒「山東京伝」『ちくま日本文学001 内田百閒』

内田百閒「山東京伝」『ちくま日本文学001 内田百閒』筑摩書房、2007年


文庫¥968(2021/04/19現在)

巷ではショートショートが流行っていると聞いたけれど、内田さんの作品はどれも短いからナウいのではないだろうか(雑)。いや、ここまで後味が悪いのは受けないのかな。

山東京伝さんの書生(玄関番)となった主人公が、はっきりものも教えてもらわないまま、一つやらかして追い出される話。よくわからん。

内田さんは夏目漱石さんを師としていたから文体が似ている、とか、内田さんが実際に夏目さんの書生となったときの体験を基としている、とか、内田さんは蟻が苦手だ、とかそんな話をネットで散見した。なるほどそうかもしれない。

「書生」は江戸時代から主に出てきた言葉だそうだから、時代的には錯誤していない。とはいえ、山東京伝さんは寛政の改革で自著が発禁になっているような戯作者・浮世絵師だ。臆病で不器用で真面目そうな主人公が、同じようなジャンルの本を書きたいのが想像しづらい。ただ小説家の性格とその作品が一致すると思い込むのはよくないな。しかも、どうやら主人公は山東京伝さんを人として尊敬、いやもはや崇拝しているようである。技というより、生き様を学ぼうとしているかもしれない。

何も言ってもらえずずっと様子を伺っているものだから、彼は本当に書生なのか?とさえ思ってしまった。書生じゃないのに居座っているなら、山東京伝も気味悪がるだろうし…。
同じ一冊に収録された「流木」にも思ったことだが、内田百閒さんは人の意気地なさを書くのが上手だ。増幅されたものとはいえ、読んでいて覚えがある感情なので、ひどく恥ずかしくなってしまう。

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