ヘッセ、高橋健二(訳)『車輪の下』 ネタバレ有り


Kindle¥726、文庫¥858(2021/03/31時点)

小学生の頃だったろうか、初めて読んだときは意味がよくわからなかったのを覚えている。その時には「良い成績を収め、学校で上手くいくこと」が私の最高の喜びだったから、主人公ハンスをただただ可哀想と思ったし、教師と一緒に彼を追い詰める側に回っていたはずだ。

しかし挫折をして「何者にもなれないこと」を知ることこそ、皆が口を揃えて言う「大人への入り口」であり、その苦い思いを経験したことのある今ともなれば、さすがに彼の心情は沁みてきた。

この作品では少年が青年になり、大人になっていく様子が抒情的な風景とともに描かれていく。街で一番、学校でも入学時二番手の優秀な生徒だった彼は、周りの(主に大人達の)無神経な期待を背負って、気を病むほどずっと勉強をし続けた。彼は勉強を正しく、誇らしく、報われることと信じていたが、それは自然を愛する彼の青春を失うことに他ならなかった。病的な勉強を止められたのは、芸術家で問題児の親友ハイルナーとの絆が固く結ばれ、とうとう「道を踏み外したとき」であった。彼の成績と信頼が堕ちるところまで堕ちてから、彼は苦労して入った学校を辞める。駆けずり回った幼い頃を幸せな「第一の青春」として思い出し、勉強に追われた「第二の青春」を取り戻すために冒険の日々を過ごそうとするも頓挫し、機械工の門を叩く。

大人は、「自分の限界を知り一度諦めを知ること」が大人になるための関門と諭す。しかしその裏腹で、挫折の経験を苦く思い、時に一方的に子供に希望を託して、それが正しい愛だと信じている。それがいかに無責任なことかも知らずに。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA